日々進化していく日野 不動産

1997年に金融危機が勃発し、ゼネコンが淘汰される時代に入りました。
ただし、政府は財政構造改革法によって公共事業の抑制を掲げていたものの、景況感の悪化も重なり公共事業削減のペースを大幅にダウンせざるを得なくなります。
 しかしながら、小泉政権誕生とともに風向きが変わります。
公共事業の大幅な削減がスタート。
金融機関の不良債権償却もスピード増す過程で会社更生法、民事再生法を申請する会社が続出します。
債権放棄によって救済されるゼネコンが出てくるものの、2度目の債権放棄にはゼネコン側の意識改革が当然、求められました。
赤字工事を排除し受注量を縮小し、それに併せて固定費を削減することで、これまで以上の利益額を捻出することが求められたのです。
 一方、減損会計の導入などが本格的に議論されるようになり、大手ゼネコンでも不良債権償却を加速させるために大型の特別損失計上を余儀なくされていきました。
大型の特別損失を計上し、それに対する特別利益を計上できなければ株主資本は毀損していきます。
大手ゼネコンでは保有していた投資有価証券、含み益のある不動産資産を売却するなどして対応しましたが、それでも株主資本は毀損していったのです。
 株主資本を増加させるには、新たな株式を発行して資金を調達するか利益を稼ぐかのどちらかです。
しかし、新たな株式を発行しても、その引き受け手が現れるような経営環境ではありませんでした。
ゼネコン各社は利益額を稼ぐことによって少しでも多くの株主資本、厳密には利益剰余金を確保する戦略に出てきたのです。
 この戦略が明確に出てきたのは2001年度以降です。
ただし、受注してから売上高へ計上されるまでのタイムラグは2年間ほどあったので、業界全体の利益率が改善しはじめたのは2003年度以降でした。
 ゼネコンのなかには、ピーク時で民間工事の約3割が赤字工事という会社もありました。
しかし、赤字工事の排除は、2001年度、2002年度、2003年度と継続し、2003年度になると多くのゼネコンの民間工事における赤字工事比率は大きく低下していったのです。
これに対し、設備工事会社の選別受注の姿勢は、それほど強くありませんでした。
この結果、設備工事業界とゼネコンの利益率格差はますます顕著になっていったのです。
日設備工事会社は赤字受注回避の姿勢に乏しい ゼネコンが赤字受注を回避せざるを得なかったのは脆弱なバランスシートを改善させるためでしたが、設備工事会社でコムシスホールディングスはこういったインセンティブが働きませんでした。
理由は、設備工事会社のバランスシートの強さです。
 設備工事会社のバランスシートを見ると、大手ゼネコンでは約1割程度にまで低下していた株主資本比率が5割を超えていたり、無借金経営であったりと、非常に強固なバランスシートを保有していました。
したがって、ゼネコンほどには利益に対する執着心に乏しかったと言えるでしょう。
 ゼネコンが赤字工事の受注を排除しても、設備工事会社は互いに競争を繰り返し、ゼネコンから安値受注を繰り返したのです。
ゼネコンが設備工事会社に安い価格を押し付けていると言われることもありますが、設備工事会社の利益に対する執着心があれば受注を断念すればよいだけの話です。
ところが、こうした設備工事会社の利益を軽視した受注姿勢の結果、営業赤字になる設備工事会社も出てきました。
 赤字がきっかけになって、利益重視の受注姿勢に変わってきた会社もあります。
しかしながら、設備工事業界全体としては受注量重視の姿勢が改まったようには見えません。
これは、前述したように設備工事各社が必要とする利益は安値受注を繰り返したとしても確保できる水準にあるからです。
設備工事各社が必要としている利益額とは配当が可能な利益なのかもしれません。
 こうした安値受注を繰り返して受注量を確保しても、最終的には利益成長なき企業に優秀な人材が集まってくるとは思えません。
すでに、建設業界全体では生産労働者の低賃金化と労働時間の長期化によって産業としての相対的魅力が著しく低下している状況です。
バランスシートが強固であれば、当面の利益成長を犠牲にしてもよいという発想は、最終的には自社の相対的な魅力度を引き下げ、優秀な人材の確保が困難な状況に陥るでしょう。
U利益成長へのこだわりはあるか 設備工事業界で指摘したことは早晩、バランスシートが強固になるゼネコンにおいても言えることです。
これまでは、脆弱化したバランスシートの回復のために選別受注を強化し利益重視の姿勢を貫いてきましたが、多くのゼネコンがバランスシートの問題を克服しようとしています。
 後述しますが、建設会社のバランスシートは不動産投資などを行わなければ、通常、非常に強固なものとなります。
なぜならば、製造業のように大型の設備投資が必要になるわけでもなく、機械設備などもリースで済ますことができます。
 民間工事においては建設工事会社の下請業者などへの支払いが発注者の入金よりも先行するため、多少の運転資金は必要ですが、それも短期の資金需要です。
基本的には無借金で経営できるのがゼネコン経営です(実際、無借金に近い建設会社は数多くあります)。
したがって、不動産投資などを積極化させなければ、常にバランスシートは強固になっていくのです。
 現在、大手ゼネコンの数社では利益剰余金をバブル期の半分並みにまでは回復させたいという経営目標を持っている会社もありますが、早晩、この目標は達成されるでしょう。
すると不安になるのは、前述した「必要とされる利益額」の議論に戻ってきます。
ゼネコンにとって「必要とされる利益額」の定義は依然として曖昧です。
この定義が曖昧であるために大手ゼネコンが発表する中期経営計画の利益目標はわずかな増加に留まるのです。
 今、ゼネコンに必要なのは「必要とされる利益額」の確保ではなく、「利益成長へのこだわり」なのです。
産業としての魅力を社会に訴えかけていくには建設業界全体が陥っている低賃金、長時間労働をゼネコンが打破していかなければなりません。
この発想がなければ、バランスシートが強固になったゼネコンは再度、低価格競争を仕掛けてくるでしょう。
この低価格競争が圧倒的なマーケットシェアを採る戦略であるのなら構わないのですが、残念ながら建設業界において圧倒的なマーケットシェアを確保することは単独では不可能です。
ゼネコン業界を分析する最大の視点がここにあります。
目発注単価が利益率の生命線 ゼネコンのコスト構造は極めて流動的です。
このため、発注者との契約単価は、細かくコストを積み上げて決定されるという要素よりは、競争相手がどういう契約単価を提示してくるのかという競争条件によって変動する傾向が強いと言えます。
コストを積み上げて積算するものの、その積算価格に対して相手が提示してくる価格を予想して、実際の入札価格を提示します。
 建築工事において発注者との契約単価は国土交通省が発表している非居住用着工床単価という統計で把握することができます。
この統計は住宅を除く建設物が着工時点でどういう単価だったのかを把握するものです。
1992年度には3.3 m当たり単価は約67万円でしたが、2005年度では約44万円まで約35%も下落しています。
直近高値の2001年度の50万円からでも約12%の下落となっています。
工事量の減少に対して受注業者の数が多いという競争条件の激化が発注単価の下落を促しているものと思われます。

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